「狛江こども食堂 学習会」レポート 前編
2016年7月22日
2016年6月26日、狛江市あいとぴあセンターや駒井町の飲食店を拠点に活動している「狛江子ども食堂」が学習会を開催しました。
学習会では、児童養護施設の職員である鈴木智善さん、東村山子ども食堂の中村恵美さん、NPO法人フードバンク狛江代表の田中好幸さんが登壇。終了後は、学習会参加の人限定で大人単身でも利用可能とした第5回狛江子ども食堂を開催、「○○さんちのカレー」として、ボランティアメンバー数人が手作りカレーを用意しました。
今回は、学習会の概要を2回に分けてお伝えしていきます。
子ども食堂とは地域で「地域の子どもたち」を支えていく活動
子ども食堂とは、1人で食事をしている子どもや、貧困家庭で満足な食事をとれていない「地域の子ども」に、食事を提供する取り組みのこと。子どもの経済的貧困と心理的貧困に対応するのが子ども食堂の役割です。
子どもの6人に1人が貧困であると言われている現在。特にひとり親家庭などは、人や地域と繋がる時間の余裕がないことが多く、この場を必要としている人々に情報を届けることが難しいのが現状です。そこで、少しでも多くの人がこの取り組みについて知り、人づてに必要な人に情報を届けられるよう、継続的に活動することが必要となります。
また、子どもが1人で行ける場所である各町内、各地域にあることも重要です。
「狛江子ども食堂」について
2016年1月24日に第1回子ども食堂を開催した「狛江子ども食堂」は、市内在住で自らも母親である市川さんが立ち上げました。「お腹がすいて眠れない」という子どもがいる現実と、子ども食堂という取り組みについてニュースで知り、すぐさま活動を開始しました。
市川さん:「保護者が忙しく、1人で留守番させている家庭や、お昼ごはんをお金だけ渡してコンビニ弁当で済ませている家庭も多いし、私自身もそうしてきた過去がありました。地域でのサポートの必要性を自らも実感し、現在はあいとぴあセンターや、主人が経営している飲食店を拠点に、月に1度ほどのペースで子ども食堂を開催しています」
「本物の食事」「食育」「団らん」を提供できる場を目指していると市川さん。添加物なしの調味料を使う、地場野菜を使うなど、食材にもこだわっています。
今までに提供してきたメニューは、豆腐ハンバーグ、餃子、炊き込みご飯など。副菜数品に味噌汁とごはんと、栄養バランスも考えられています。
第1回のメニュー写真
この夏には、店舗そばの神社で行われるラジオ体操の参加者で、希望者に朝食としておにぎりをふるまうという新しい取り組みがスタートします。
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夏休み企画!朝食付きラジオ体操
6時20分 受付
6時30分 ラジオ体操
6時45分 朝食(おにぎりと味噌汁)
期間: 7月25日から8月5日(土曜日、日曜日はお休み)
場所 :駒井町1-6-11 日枝神社
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上和泉地域センター 子どもおにぎり食堂 料理教室
日時:7月27日、8月2日、8月28日
場所:上和泉地域センター
*チラシについているチケットを持参した子どものみ参加
メニュー:(変更あり)7月27日、8月2日:おにぎり、具沢山味噌汁、 8月28日:夏野菜手作りピザ *どちらも おやつ付き!
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社会的養護を必要とする子どもたち 鈴木智義さんのお話
狛江市青少年第二育成委員会 委員長であり、現在児童養護施設で保育士として働く鈴木智善さんからのお話がありました。
テーマは「社会的養護を必要とする子どもたち」。児童相談所を介して入所してくる子どもたちの現状をお話ししてくださいました。
児童養護施設とは?
災害や事故、親の離婚や病気、また不適切な養育を受けているなどさまざまな事情により、家庭による養育が困難な2歳からおおむね18歳の子どもたちの生活の場。家庭に代わる子どもたちの「家」であり、協調性や思いやりの心を育みながら生活しています。子どもたちの幸せと、心豊かで健やかな発達を保障し、自立を支援しています。
東京の現状
都内には11カ所あり、狛江は世田谷児童相談所が管轄。ケースワーカーだけでは把握しきれないため、子ども家庭支援センターと連携し、地域の子どもたちの状況を把握しています。全国に2015年6月現在で602施設、約3万人の子どもが入所しています。東京都には59施設、約3000人が入所、その9割ほどが、虐待を受けて保護された子どもたちです。
施設の子どもたちの生活
施設は、2歳から18歳(在学中の子どもは20歳まで)の子どもたちが生活する場なので、朝起こすことから始まり、食事、日常生活のサポートなど、親代わりとなって子どもに接しています。未就学児については、二重保育となるため保育園には通えないので、幼稚園に通っています。
子ども食堂に期待すること
保護される前は、「食べることができない」「学ぶことが出来ない」状況で生活していた子どもが多いです。子ども食堂では、ただ食事を提供するだけでなく、旬の野菜を使った食事や季節料理を提供することを期待しています。子どもたちの中には、お正月でもカップ麺を食べるなど季節感のない食事をしていたため「おせち料理」を知らない、餅の食べ方を知らない、という子も実際にいるのが現状なのです。
地域の皆さんへ
狛江子ども食堂のエプロンは、偶然にも虐待防止リボンの色と同じオレンジ色。
電話番号189(いちはやく)=虐待を通報する番号についても、多くの人に知ってほしいです。狛江にも、虐待を受けて困っている子どもたちがいます。ぜひ、そういう子を見かけたら189で情報提供をして欲しいと思います。
東村山こども食堂 中村恵美さんのお話
東村山こども食堂の活動について
2015年7月にスタートした東村山子ども食堂。市内には13町あるが、この1年活動してみて「各町内で子ども食堂が必要だ」と感じたと中村さん。
閉店したそば屋を月5万円で借りてスタート。建物が古かったこともあり、現在は事務所として利用しているそうです。
活動の必要性を感じた出来事
中村さんは、20年ほどリサイクルのハンドメイド講座を子供向けに行ってきました。学校を利用した土曜講座にやってきた、小学4年生の転校生との出会いが、東村山子ども食堂の活動を始めたきっかけとなりました。
ある時、朝10時に「あーお腹すいた」とその子。保護者はシングルマザーで、時々夜いなくなることがあるという状況で、昨晩も夕飯も食べていないとのことでした。
「4年生なので、家に食べ物さえあれば調理するなりして自分で食べることが出来るはず…」
そこで中村さん、「いなくなる時は、コーンフレークくらいは買っておいてとお母さんに言おう」とアドバイス。1か月後、「買っておいてくれた」と報告してきたそうです。
これが、子ども食堂の必要性を実感した出来事でした。
活動場所のバリエーション
子ども食堂の活動には、開催場所が不可欠。場所も多様化しており、現在は以下の6つのパターンがあります。
1.古民家を生かす
2.一般家庭が自宅を開放する
3.野外イベント(餅つき大会、焼きそばを配るなど)
4.公民館などの公共施設
5.学校・寺・保育園など、既存の建物を利用した「既存型」
6.居酒屋などの飲食店を日中だけ利用する「店舗型」
東村山の今
次第に一人で把握することが難しくなり、各場所を運営しているボランティア・協力者に運営を任せています。
子ども食堂を、主旨に賛同した人がその人らしいスタイルで始めて、その人たちが日本中で次第に輪になれば、狭間で救われない子どもたちを網羅できると考えています。
地域の人が今できること
朝コンビニに行ったら、ぜひ、周りを見回してみて下さい。小学生を見かけたら、どんなものを買っているか見てみて下さい。朝からチョコレートバーやお菓子を食べている子もいます。そんな時は、ぜひ話しかけてみてください。
レポート後半は、東村山子ども食堂を運営する中村恵美さんの質疑応答コーナーと、狛江で生活困窮者に食糧を提供している「NPO法人フードバンク狛江」の田中好幸さんのお話をまとめてお伝えします。
(by shino)