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HOME子育てあれこれ障がい東田直樹さん講演会に参加して『風を感じて~自閉症の僕がありのままに生きるために』
HOME子育てあれこれ親子の健康発達編東田直樹さん講演会に参加して『風を感じて~自閉症の僕がありのままに生きるために』

皆さんは東田直樹さんという男性をご存じでしょうか?
彼は会話をすることができない重度の自閉症です。しかし、パソコンや文字盤ポインティングにより援助なしでコミュニケーションを取ることができます。
東田さんは多くの著書を出し、自閉症者の豊かな内面世界を発信し続けています。中でも「自閉症の僕が跳びはねる理由」は各国語に訳されて、欧米各国でベストセラーになっています。
NHKドキュメンタリー「君が僕の息子について教えてくれたこと」が、昨年夏に放送されて、大きな反響が広がっています。

注目が高まり、有名となりつつある東田直樹さんが狛江にやってくるということで、スマイルぴーれも取材させていただきました。

東田直樹さんのプロフィール

キャプション

1992年 8月生まれ
千葉県出身。作家。
小学校5年生までは授業中も母に付き添われて、通常学級に在籍。
小学校6年生から中学校3年生までは、養護学校(現・特別支援学校)で学ぶ。
その後、2011年3月アットマーク国際高等学校(通信制)卒業。

第4回・第5回「グリム童話賞」中学生以下の部大賞などを受賞。
エッセイ、童話、詩、絵本を18冊出版。

 

自閉症ってなんだろう?

子育てしている皆さんは、きっと1度は「発達障がい」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。自閉症、アスペルガー、学習障がい(LD)、注意欠陥・多動性障がい(ADHD)・・・いろいろ耳には入ってくるけれど、それぞれを厳密に定義づけて説明するのは、とても難しいです。
私たちも「自閉症の東田さんが狛江に来る!」と聞いても、自閉症の人がどのような人なのかしっかり理解できていませんでした。コミュニケーションが取れなくて、なんとなく落ち着きがなくて、突然大きな声を出したりするのかな?自分の中にある自閉症の方のイメージはそのような感じでした。
自閉症を調べると「社会性の障がいや他者とのコミュニケーション能力に障がい・困難が生じたり、こだわりが強くなる精神障がいの一種。先天性の脳機能障がい。」と書かれています。
「自閉症の基本的特徴は、3歳くらいまでに表れ、3つの主な特徴がある。
1.社会性の発達の障がい
2.コミュニケーションの障がい
3.活動と興味の偏り  」
文字にして説明するとこのようになるのですが、やはり完全に理解できません。
でも1つだけ言えることが、自閉症と一括りに言っても、その症状は様々で一人ひとり違うということです。東田さんは重度の自閉症のため会話をすることは難しいですが、中には話すことができる自閉症の方もいるそうです。

東田さんの会話方法≪文字盤ポインティング≫

東田さんは会話をすることができません。私たちは思ったことや感じたことを言葉にして伝えることができますが、東田さんは話そうとすると頭の中が真っ白になってしまうそうです。そのために、東田さんは文字盤を使います。
文字盤には、アルファベットと数字が書かれています。パソコンのキーボードを簡単にしたものと言っていいでしょう。
この文字盤は東田さんの母、東田美紀さんが作られたものです。「直樹さんが考えていることを知りたい」という母としての強い思いから、試行錯誤の末に考え出されました。直樹さんが文字盤を使いこなせるようになるまでは、とても長い時間と根気強い努力が必要だったそうです。
東田さんは、アルファベットを指差しながらローマ字表記で言葉を作り、言葉を発していきます。例えば、「BOKU」と文字盤を指差した後に、初めて「ぼく」と発音します。こうすることで、言いたかった言葉を忘れずに伝えることができるそうです。
東田さんは突然意味の分からない言葉も発しますし、奇声を出します。突然席を立って歩き出すこともあるし、跳びはねてしまいます。その姿だけを見れば、何も考えていないように思われるかもしれません。でも、その心の中は私たちと変わりありません。
今回の対話の中でも「マニュアル化」「危惧」「問題性や危険性」など、かなり難しい言葉を交えて、自分の考えを発表されていました。言いたいことや伝えたいことがいっぱいあることが、文字盤に向かう東田さんから強く伝わってくるのです。東田さんはご自身のたゆまぬ努力とお母様をはじめとする周りの方々のサポートにより、自分の気持ちの表現方法を持つことができました。では、他の自閉症の方々はどうなのでしょう?東田さんと同じように、自分の考えていることを伝えたいと思っているのではないでしょうか。周囲から誤解されたまま、悔しい気持ちで生活していくのは、きっととても辛いことだと思います。

いざ講演会

12月3日(水)~9日(火)狛江市の「障がい者週間」行事の目玉イベントとして、東田さんの講演会が開催されました。
「障がい者週間」とは、障がい者福祉に対する関心と理解を深める、障害のある方に社会参加の場を提供し、さまざまな活動に積極的な参加を促すために全国で設定されている期間です。

(プ ロ グ ラ ム)

 

13時30分  開場

 開会のことば(一般社団法人サポート狛江  長谷川まゆみ)

         あいさつ (狛江市福祉保健部長 平林浩一)

         登壇者紹介  (一般社団法人サポート狛江  中川信子)

         ミニ講演1 「発達障害をめぐって」      (20分

         山登敬之さん(精神科医・東京えびすさまクリニック院長)

         ミニ講演2 「これまでを振り返って僕が思うこと」(15分)

          東田直樹さん(作家・自閉症者)

         ミニ講演3 「わが子の可能性を信じる子育て」 (30分)

          東田美紀さん(東田直樹さんの母)

           (休憩・書籍販売15分間)

          東田直樹さん × 山登敬之さん お二人の対話(コーディネーター 中川信子)

         アンケート記入等

16時30分   閉会

狛江市には言語聴覚士の中川信子先生というその道では有名な方がおり、障がいを持つ方のサポートや療育に関して積極的に活動されています。

そのご縁もあり、「一般社団法人サポート狛江」主催による講演が実現したのです。

開始の少し前に、東田直樹さんとお母様の美紀さんが登場しました。
東田さんは私が想像していた通りの、声を出したり揺れたりという「自閉症」の動きをしていました。
しかし講演会が始まって、 私は彼から出るまっすぐな言葉たちにぐぐっと引きこまれ、笑い、泣き、心をとても揺さぶられるあっという間の2時間を体験したのです。
スライドに映し出される文章を読む東田さんの言葉は、正直あまりよく聞き取れませんでしたが、一生懸命に言葉を発し、ユーモアも交えながら語る胸のうちは、私の想像していた自閉症の方から出る言葉と全くかけ離れていて驚かされたのです。

「見かけでは何もわかってないように見えるかもしれないが、考えることが大好きです。
ポンコツの体を操縦するのは難しいけれど、考えることは自由にできる。」
東田さんの言葉です。
例えて言うなら、今まで混沌としていて生物すら住んでいないと思われていた深海から、青くて豊かな海が現れたような驚きでした。
東田さんの「自閉症」の体の内の海には、さんご礁の海のような美しさで色とりどりの熱帯魚すら泳いでいたのです。
この事実が世界をとても驚かせ、自閉症を持つ家族たちに希望を与えたのでしょう。

東田さんとお母様の美紀さんのお話に、私は自分の子育てを省みていました。
小さな娘が始めて言葉を発したことが手放しでうれしかったあの日。
小さな体から出てきた言葉が、まだなにも意味を持たないとしてもコミュニケーションが取れた喜びに震えたのです。
しかし今は、子ども達から出てくる言葉を「こうあってほしい」と期待したり、「うるさい」と塞いだりしてしまう。
改めて娘たちから出てくる言葉という水を、それがどんな色でも匂いでも、感謝して受け止めようと思いました。
お母様美紀さんの「わが子の可能性を信じる子育て」は、子どもをおおらかに見守り、時にはギュッと抱きしめ、信じて待つことだと理解し、肝に銘じました。

長い講演会で疲れたのか、最後のほうはあくびを頻繁にし、エコルマビルから見える眺望を見に何度も窓際へ走り、「オワリ、オワリ」としきりに言う姿すら、会場にいた参加者すべての人が微笑みをたたえて見ていました。
区別せず、認め合い、自然に交わって生きる。
そんな世の中になればいいなと、心から願います。

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10年分のありのままを収録した心の詩集。
みずみずしい言葉が胸に沁みます。
著者:東田直樹
出版社:KADOKAWA/角川学芸出版

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世界20カ国でベストセラーになった代表作。

 著者:東田直樹
出版社: エスコアール

帰りに会場で売られていた本をパラパラとめくっていたら、とても素敵な本を見つけて買いました。
『ありがとうは僕の耳にこだまする』 東田直樹著 角川学芸出版
まっすぐで時にシニカルで、心をキレイに洗い流してくれるような詩集です。

 

(byりん、はらり、ママヒナ)

 

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