このページの本文へ

HOME健康あれこれ病気・病院インフルエンザ流行中!ぴーれ記者の「熱せん妄」体験記

「熱せん妄」という言葉を聞いたことがありますか?
熱せん妄とは高熱に伴う異常行動のことで、特に子どもが起こしやすいと言われています。
用語として聞いたことがなくても「インフルエンザによる高熱で、意味不明のことを話した・窓から外に出ようとした(※1)」などというエピソードを聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

※1 以前はインフルエンザ治療薬の副作用として報道されることもあった症状ですが、現在は薬の服用の有無に関わらず発現することがわかっています。

昨冬、記者の家ではインフルエンザが猛威を振るい、小学生の長女にはこの「熱せん妄」の症状が出ました。
ぴーれ記者が身をもって味わった、子どもの「熱せん妄」体験談をお送りします。

恐怖の熱せん妄体験談

家族が次々とインフルに

熱せん妄の恐怖エピソードの前に、まずは昨冬の我が家のインフルエンザ罹患の状況を。

我が家は私(ぴーれ記者)と夫、娘2人の4人家族。
1月半ばの土曜日、最初に高熱を出したのは当時2歳の次女でした。
その日のうちに受診して、インフルエンザA型が確定。
マスクをしてもすぐに取ってしまい、咳エチケットが実行できるはずもない2歳児の看病。
週明けには私もみるみる体調を崩し、木曜日にやはりインフルエンザA型との診断でした。

医院からも薬局からも「他の家族と寝室を分ける」という提案がありましたが、運の悪いことにその週は夫が出張中。
当時6歳の長女はまだ1人で寝ることができず、ウイルスの蔓延する寝室に床を並べました。

下がらない熱

翌週土曜の朝に高熱を出した長女は検査なしでインフルエンザA型の診断が下りました。
はじめの2人と違ったのがそこからの経過です。
次女と私は治療薬と解熱剤を服用してから順調に回復したのですが、長女の熱はなかなか下がりませんでした。

41℃まで上がった熱(そんな数字を見るのは初めて!)は、解熱剤を飲むといったん40℃前後までは下がるのですが、楽になったとはとてもいえず、しかも、2時間程度で元に戻ってしまうのです。
暑い寒いと本人の訴えもめまぐるしく、そのたびに室温調節や保冷剤などで対応しました。
次に解熱剤を飲めるまでの6時間の待ち遠しかったこと!

「窓が欲しい」

長女の様子が怪しくなってきたのは二度目の解熱剤を飲んでから、体温が再び上がり始めた頃。
もう外はすっかり暗くなる時間でした。

ふうふうと苦しそうな息に混じって「窓が欲しい」というひと言。

「窓を開けて」でも「外が見たい」でもなく、「窓が欲しい」という絶妙に何かがずれた台詞が引っかかり、念のため2階の寝室ではなく1階の居間で寝かせることに。

気がまぎれるだろうとつけていたテレビを「怖いから消して」と言い出したあたりで(ちなみに、そのとき流れていたのは怖い描写は1ミリもないコメディ映画でした)、どうやらこれは尋常ではないと我々両親も確信しました。

目を離さずに

下がらない熱・ただならぬ様子の長女・更けていく夜と三拍子揃ってすっかり不安になり、#8000(※2)に電話をしてアドバイスを仰ぐも、「薬を飲んで水分が取れているなら今は見守るほかない。とにかく目を離さないで」とのアドバイス。
すぐに救急受診するような重い病状ではないことがわかったのはよかったのですが、苦しそうな我が子に対して何も手立てがなく、もどかしい気持ちでした。
家族でただ1人罹患していない夫ともうすっかり全快した次女はほどなく寝室に引き上げ、そこからは私一人の見守りとなりました。

このときに私が感じていた不安は「もし自分がうっかり眠りこんでしまって、急変を見逃してしまったらどうしよう」というものでしたが、実際は眠りこむどころか、ホラー映画並みの恐怖が続いて、ほぼ一睡もできませんでした。

※2 #8000:小児科の医師や看護師に子どもの症状を伝えて、適切な対処や救急受診の要否のアドバイスを受けられるダイヤル。

異常行動あれこれ

その晩の長女の様子を、メモに残っている中からいくつか紹介します。
長女はしばらくうとうと→異常行動→落ち着かせる→しばらくうとうと、という繰り返しで、次はどうなるかと気の抜けない一晩でした。

◎悪夢系
 言わずと知れた、現実と悪夢の境目がごっちゃになってしまっているパターン。
 ◆「やだやだやだやだやだおうちの外にも中にもたくさんいる早く出して」
 ◆「さっき飲んだカラスはふたつだから、いそいで手を洗わないと」
    言っている内容はかなり怖いのですが、夢の話だろうとこちらも高を括れるので、このあたりの対応は実はまだ楽なほうでした。

◎言語崩壊系
 しっかり目が覚めているように見えるのに、言葉を正しく話せていないパターン。
 ◆「お水を何回むんでも終わらない…。お母さん、わたしの代わりにお水むんで?」
 ◆(激怒してこちらを指さしながら)「あ!」「う!」「あ!」「らあ!」
    一見普段どおり話しているようで「むんで」がさっぱりわからなかったのと、さらには全く言葉が喋れていない状態。
    このときはもう元の娘には戻らないのではないかと思い、本当に恐ろしかったです。

◎実力行使系
 よく注意喚起されている「突然外に飛び出していく」パターン。
 ◆(がばっと立ち上がって)「行かなきゃ!」(走って玄関に向かう)
    夜半に追加した解熱剤が効いて、小康状態になったように見えた矢先の暴走。
    熱が下がったせいか驚くほど素早い動きでした。
    次女用のベビーガードに阻まれて体当たり(開け方がわからなくなっていた模様)していると   ころを、羽交い絞めにして連れ戻しました。

無事に過ぎ去ったら笑い話として周囲に話そうということだけを心の支えに乗り切った一晩、私は歯を酷く食いしばって耐えていたらしく、朝食の席で顎がギシギシと痛くてたまらないことに気づきました。
夜が明けてからの経過は順調で、昼までには熱も38℃前後になって、やっと不安が去りました。
長女は心配した後遺症のようなものもなく、けろっと元に戻りました。

熱せん妄、その後

この話を記者個人のSNSでしてみたところ、ご自身の家庭での体験を教えてくださった方が何人かいて、決して珍しい現象ではないということがわかりました。
ほとんどは小学生か中学生のお子さんのエピソードで、中にはお子さんが大学生のときに起きた(お子さんは幻覚の内容も覚えていて、誰かに「中」「外」と選別され、自分は「中」だったから窓から飛び降りなかったと話したそうです)という方も。

今回の記事執筆前に改めて調べてみると、熱せん妄は1歳くらいから起こると記されていることもあるのですが、普段から謎の行動が多い幼児よりも、ある程度筋道の通った行動や会話のできるようになった学齢期以降だからこそ、親にとって衝撃的な体験となっているのだろうなぁと感じました。

私がこの体験を記事にしようと思ったのは、読者の皆さんを徒に怖がらせようという意図ではなく、インフルエンザにはこんな症状もあると事前に知っておくことで、実際にお子さんが熱せん妄を起こした際に「あ、これ『ぴーれ』で読んだやつ」と余裕を持って受け止めていただきたいという気持ちからです。
大事なお子さんのいつもとは違う姿に不安が募ることと思いますが、落ち着いて対処してもらえればと思っています(※3)。

※3 長女がそうであったように、熱せん妄は見た目の派手さに反して「治ってしまえば元どおり」というものなのですが、長引いたり繰り返したりするときはインフルエンザ脳症の疑いもあるため、迷わず受診をお願いします。

インフルエンザ、今年も流行中

先月半ば、国立感染研究所が例年よりひと月早いインフルエンザの全国的な流行を発表しました。
狛江市内の小学校では、既に10月にインフルエンザの流行による学級閉鎖を行ったところもあります。

ワクチン接種やマスク、手洗い・うがいなど、読者の皆さんも感染症対策には気を配っているものと思われますが、学校や園で集団生活を送っている子どもたちは常に感染の可能性にさらされています。
ワクチン接種は12月中旬までが望ましいとされていますので、まだの方はお早めに!

この冬も皆さんが健やかに過ごせることを願っています。

by むーちょ

カテゴリー

ページの先頭へ戻る