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HOME記事一覧発達障がいの息子を育てて#2

(#1から続き)

▽契機になった保護者会での先生の言葉
 1990年代前半に、家族も一緒に、アメリカへ赴任しました。息子は現地校に通いましたが、そのことがプラスになったのか、マイナスだったのか。息子からすると、言語や文化が違う環境に入れられて、訳が分からず、苦労したのだろうと思います。大人になって振り返った時、嫌だった記憶の一つとして、アメリカでの生活を挙げていました。

 3年ほどして、日本に帰国、狛江市の市立小学校に入学しました。親の立場では、自閉症の疑いをぬぐいきれない、逆にそうだろうという思いが強まるばかりでしたが、どうしたら良いのか分からず、「なんとかしなければ」という少しずつ焦りのような感情が積み重なるような状況だったと思います。

 契機になったのは、2年生の3学期の保護者会でした。パートナーの回想です。「みんなの前で先生にはっきりと言われた。『3年生になったら、厳しいと思いますよ』。そう言われたときは痛恨というか『あっ、それじゃまずいな』と思った。2年の時の先生は客観的に物事を見る先生だったから、個人攻撃をしているとは思わなかった」。

 その先生は「特別の専門機関に行ってみられるのも良いと思います」とも、他のお母さんたちの前でオープンに言われたそうです。それから、医療を含め、息子にとって適切な対応をしてくれる場所を求めて巡り歩く日々が始まりました。

▽病院を探して
 まず、最初に飛び込んだのは児童精神科があった都立梅ケ丘病院です。ただ、その時の先生が診察も検査もしないのに、いきなり「リタリンで様子見ますか」と言われて驚きました。リタリンというのは主に注意欠如・多動症(ADHD)の子どもさんに処方する薬です。アメリカではよく使われていたので、その薬のことは知っていましたが、診察も検査もせずに処方しようという先生に不信感を抱いてしまい、早々に失礼しました。

 次は青山通り沿いにあった「こどもの城」のクリニックを訪れました。全国的に有名だったため、なかなか予約を取るのが大変でしたが、なんとか受診にこぎつけました。パートナーの記憶によると、臨床心理士による心理テストと親の面接があったようです。テストの結果では引っ掛かることがなかったようで、その時も「お宅のお子さんは何が不満なんですか、どこが悪いと思っているのですか」というような対応で、パートナーは追い返されてしまったという受け止めをしています。ただ、こちらのイメージとは違い、当時のこどもの城クリニックは、障がいの程度の重い子どもさんを受け入れていたのでしょう。場違いな相談者だったのかもしれません。梅ケ丘病院もこどもの城クリニックも、移転、統合されて、現在はありません。

 立て続けに病院を訪ねたものの、もやもやは晴れませんでした。そんな中で出会ったのが、山脇由貴子先生でした。山脇先生は現在、子育てや家族関係についての本を多く出版され、ご自分のオフィスを構えてご活躍ですが、僕たちが出会った時は千歳船橋にあった世田谷区の児童相談所に心理の担当としてお勤めでした。息子のことをとても丁寧に見てくださり、私たち親の悩みにも耳を傾けてくださいました。小学4年から6年まで、世田谷区の児童相談所に通い、私たち親も相談に乗ってもらいました。

 息子が中学に入った後だったか、山脇先生が世田谷から東京都児童相談センターに異動され、そこにも数回通い、山脇先生にセットしていただいて、テストを受けました。テストを実施してくださった先生から「右脳と左脳のバランスが悪い」と言われたことを覚えています。

 山脇先生には多くのアドバイスをいただきましたが、その一つが「これからは医療とつながっておいた方が良いのでは」でした。発達障がいではあるけども、これからを見据えて、青年期、大学生とか大人になってもかかれるように、医療とつながっておいた方が良いんじゃないかということで、祖師谷大蔵の成育医療センターに勤務されていた山脇先生のお知り合いの先生を紹介いただき、息子は成育医療センターに通うようになりました。紹介いただいた先生はすぐ、産休に入られてしまいましたが、宮尾益知先生につないでいただきました。

 息子の場合、それまでも何度か、検査を受けましたが、病名を確定してもらうまでには至りませんでしたが、宮尾先生は病名を確定して診断書を書いてくださり、薬も処方していただきました。宮尾先生には息子が30歳になるころまで診ていただきましたが、成育医療センターを退任されることになり、登戸のクリニックを紹介していただきました。息子は今、そこで定期的に診察を受けて薬を処方してもらっています。

▽YMCAでソーシャルスキルトレーニング
 時間を少しさかのぼりますが、山脇先生にはもう一つ、アドバイスをいただきました。それは「YMCAに、ソーシャルスキルのトレーニングプログラムがあるので行ってみたらどうですか」というものでした。調べてみると、国立駅の近くに、そうしたプログラムを実施しているYMCAがあったので、高校から大学にかけてだと思いますが、国立に通いました。

 大学で発達障がいについて専門的に学んだ若い講師がお金の使い方や買い物、銀行口座などについて、実践的に教えるもので、イベントで露店を出したりしたこともありました。今もそうしたプログラムがあるのか、については残念ながら、把握していません。
(#3に続く)

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