ここからは、小生の問いかけにパートナーが答えたものです。
▽告知をしたよね。あの時はどうだった?
たちかわ若者サポートステーションの先生と女性の担当の方から「告知はした方が良い、黙っている段階ではない」と言われた。それで、告知を受けた時の反応記事を読んだり、当事者の感想や意見を読んで、こんな風に思うのかな、といろいろ考えた。
こちらも予習して、心の準備をして、どんな風に言おうか、すごく考えて、結局は真実を言うしかないなと思った。告知したら、あまりはっきりした反応は返ってこなかったが、自分の嫌だった経験が口からあふれ出るようにわーっとしゃべった。アメリカで嫌だったこと、小学校の時に嫌だったこと、中学校の時に嫌だったこと、お母さんがこうやって、僕を仕向けて嫌だった、あれが嫌だった、これが嫌だった、嫌だったことをすごく思い出してすごく訴えた。まだガス抜きが足りないらしくて、今でも時々、嫌だったことを強調するように、認識を新たにするように言うことはあるね。
▽弟との関係は?
すごく難しかった。長男はすごく性格の良い子だと思う。優しいけど、溜め込むと攻撃的になっちゃう。どうして良いか分からなくなって、キレてしまうことがある。就職してから、1回パニックになったことがあって、新たにパニック症状という二次障害を発症しちゃって「リスペリドン」というすごく弱い向精神薬を処方されている。精神科に通っている人は誰でも処方されているような一般的な薬です。
▽親として周りへの対応、工夫はどうだった?
保護者会は必ず出席した。学校で手伝いを求められる機会があれば、必ず、何らかの手伝いを申し出た。そういうことによって、他の保護者とか先生たちに覚えてもらうように努めた。息子は学校生活の中で「ああ、あの子ね」という風に分かってもらってると思うけど、親も参加している、学校に任せて知らん顔してるわけじゃないということを分かってもらえるように努めた。
心掛けたのは、いつでもオープンにしているということ。保護者会の時にも、自分の子どもはこうだから、と説明するように努めた。低学年の時に、保護者会が全体であって必ず、1人一言ずつ「感想を言ってください」というのがあって、その時には必ず、同じように自分の子供のことをちゃんと話した。発達障がいとは言わないけど、うちの子は右も左も分からない、言ったことがすっと入らない、間違って行動したりとか、何だと思われることを平気でしてしまうことがあるので、ご協力くださいという感じでお願いしていた。
他のお母さんで興味のある方に「どうしてそんなことを言ったの」と聞かれたから「こういうことで児童相談所にも行ってるし、こういうこともやってるのよ」とすべてオープンに隠すことなく話をしていた。PTAの役員をやった時に、前年度の役員だったお母さんが「自分のうちの子どもは障がいがある」と言っていたそうで「あの子のお母さんがあの方なんだ」ということを初めて知ったことがあった。
そのお母さんが「うちの子は発達に問題があって、遅れています。勉強も遅れているし、皆さん、同じ学年でも弟みたいな存在なので、我慢して付き合ってください」と、本当におおっぴらに言ってたよ、という話を聞いた。私の前にもそうやって言ってる人がいたんだな、と思った。
息子のことを尋ねられたら、誰に対しても包み隠さずに話すようにしていた。だから、その時は私に言わなかったけど、後になって「実は、うちも三女が発達障がいだったの」とか、または「言わなかったけど、うちもお兄ちゃんがそうなの」とか。その後、友だちになったり、仲良くなった人が「あのときは言わなかったけども、うちもそうなの。この間、診断してもらった」。そういう人はけっこういた。
▽自分の子がもしかして、と思った時にどうすべきか、アドバイスは?
まず、乳児健診で保健師さんに相談すること。今は保健師さんも勉強して知識を持っているので、発達障がいについて分かっていると思う。その後、小学校の時であれば、学校の先生に相談すれば良いと思う。今、学校の先生は発達障がいの研修を受けているので対応してくれるのではないかな。それからあと、児童相談所や今は市役所の子ども発達支援課とかかな。
乳幼児健診で看護師さんや保健師さんが「何か発達で不安なことがありますか」なんて尋ねてくれたら、そういうところは大いに相談すれば良いと思う。そういうところを窓口にして、どんどん紹介してもらえば良い。うちの息子みたいにグレーゾーンで分かりにくい場合に、見て見ぬ振りしちゃおうか、成長の過程だから大丈夫かなって思うケースもあるかもしれないけど、やはり1回は相談しておく方がいいんじゃないかな。
子どもは発達していくから、今はこういう段階だけど、次の段階で他のお子さんから、発達の面で遅れていくような不安があったら、ここに相談、あそこに相談ということを拾っていって、お皿を次から次と用意した方が親も安心だし、子どもも安心だと思う。
▽どんなフォローが心強かったか、求めたことは?
山脇先生の存在が大きかった。基本的には、あの先生が言われる通りにやった。先生がYMCAとかも行った方がいいよと言われたら、YMCAに行きました。YMCAのそういうところがあるからやってみたら、と言われて、やってみました。分からないことだらけだったので、言われたとおりにやってみた。ソーシャルスキルトレーニングも言われたとおりにした。先生が「医者につながった方がいい」と言うんだったら、そのとおりにした。ソーシャルスキルトレーニングをやりながら、就職のことを考えるようになって、立川のたちかわ若者サポートステーションを勧められたら、行きました。
周りが働きかけてくれるのを待っていてはダメ。子どものことを隠すのではなく、できるだけオープンにした。発達障がいの関係の本も、早くからいっぱい読んだ。発達障がいであることを認められない親御さんもいるようだけど、うちは逆。発達障がいと向き合って、できる限りのことをやろうと思っていた。サポートを受けられることはどんどん積極的に調べて攻めて、利用すべき。多少お金がかかろうと、これからの将来が懸かっていると思って、そこにつぎ込む方が絶対に良い。貯金を下ろしても、そこで使うべきで、けちけちしてはいけない。そこでお金を惜しんではいけないと思う。YMCAのソーシャルスキルトレーニングもお金がかかったけど、ちゃんとつぎ込んだ。それに対して悪かったとか、変だとかおもったところは少しもない。狛江市の社会福祉協議会にはすごくお世話になっている。息子はいまでも自分でアポを取って、時々行ってる。
親がかりだったものが息子本人が自分の障がいを知って、当事者だという意識を持って、自分が助けを求める側になることができた。本当に成長したと思えるのは、本人が自分がそうなんだ、当事者なんだと分かって、自分から、担当の方に連絡を取ったりとか、カウンセラーのところに行った時も自分のことを自分の言葉で話していると思う。そこに私たちは一切関知してないし、もう親にはフィードバックされない。そうなるまで、いろんな機関の人たちが支援してくれた。そこまで彼が成長できたっていうのは本当に、そういうお世話になったいろんな人たちのおかげだと思う。
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息子の子育てについていろいろ書いてきましたが、書き切れずにボツにした部分は倍ぐらいありました。言葉足らずになっているところも多々あると思います。記事で紹介したことは20年以上前のことですので、現在は状況が大きく変わっているでしょう。発達障がいに対する社会の理解も大きく進んだと思います。ただ、発達障がいのお子さんを抱えるパパやママの悩みや不安は20年以上前と変わらないのではないでしょうか。そんなパパやママに少しでも役立てば幸いです。
(終わり)