子どもと過ごす毎日の中で、「居場所」について考えたことはあるでしょうか?
例えばこれまで、ママ友作りがあまり得意ではなかった私にとって、親子で通う子育て広場で少しずつ顔見知りを増やしていくことが、育児や地域の情報に繋がる第一歩であったこと。
例えばこれから、何でも家族に話してくれるわけではない年頃に差しかかった我が子に、家以外に安心して過ごせる場所や相手との出会いを望んでいること。
子育ての世界に足を踏み入れて9年目、狛江に移り住んで6年目の筆者は、ここ数年、親子の居場所や子どもの居場所が気にかかっています。
また、「居場所」についてアンテナを張って情報収集する中で、そういった「居場所」を作ろうとされている方々にも興味を持つようになりました。
狛江で子育てをする皆さんを応援するスマイルぴーれの活動の一環として、狛江市内の「居場所」に関する情報を皆さんにシリーズでお届けできればと考えています。
第1回は、この5月に西野川にオープンしたばかりの「野川のえんがわ こまち」を取材しました。
野川のえんがわ こまち
ブルーベリー畑が両側に広がる八幡通りを北へ。西野川の住宅地の一角に「野川のえんがわ こまち」(以下「こまち」)はあります。
庭先の駐輪スペースに小さな看板とのぼりが立っていることを除けば、外観は少し古いタイプの普通の住宅のよう。それもそのはず、「こまち」は空き家を利用した施設なのです。
築43年というこちらの建物、どこか懐かしい佇まいで、実家に帰ってきたような心やすさがあります。
運営しているのは「comarch(こまち)」という市民団体。
狛江(coma)をつなぎ(arch)、誰もが共に(co)歩む(march)ことのできるまちづくりを目指して、2019年に結成された団体です。
「こまち」の建物は、もともとは発起人である梶川さんご夫妻の親戚が住んでいた空き家に、家財の整理や耐震補強工事を施し、市民の交流の場として活用できる場所にしたものです。
以下、「こまち」はいったいどんな場所なのか、いただいたパンフレットから、文章を引用します。
<野川のえんがわ こまち ってどんな場所?>
昭和の空気を感じられる空き家を活用した空間です。
あかちゃんを連れたママさんパパさん、学校帰りのこどもたち(学校に通っていないこどもも)、ご年配の方々…
何歳でも、障害があってもなくても、誰でもいつでも ふらりと立ち寄れる「まちの縁側」を目指しています。
ここで気になるのが「野川のえんがわ」「まちの縁側」という表現。
読んだ限りでは「誰でもいつでも」「ふらりと立ち寄れる」のが「まちのえんがわ」のようです。
さて、「まちのえんがわ」とは何でしょう?
取材では梶川さんご夫妻にお話を伺いました。
「まちのえんがわ」
「まちのえんがわ」の謎を探る前に、まずは「こまち」ができるまでのエピソードを。
発起人の梶川さんはもともと共生型デイサービスというものに関心を持ち、発祥地である富山に通って見学や研修を受けていらしたそうです。
共生型デイサービスとは従来の縦割り型の福祉ではなく、赤ちゃんからお年寄りまでが同じ場所で集える柔軟な福祉サービスの形態で、小規模・多機能・地域密着が特長とのこと。
その後、親戚の家が偶然空き家となったことで、理想のサービス拠点を実現するチャンスを得た梶川さんとcomarchの皆さんは、デイサービスの事業所としてではなく「まちのえんがわ」として「こまち」をオープンしました。
既存の福祉制度には敢えて乗らず、制度の隙間を埋めることで、利用者を限定しない開かれた施設にしたいと考えたと語る梶川さん。
狛江のお隣、世田谷区で取り組まれている「地域共生のいえ」(空き家や個人宅の一部を活用した地域住民の居場所づくりの活動で、喜多見駅近くの「おでかけひろばFUKU*fuku」もそのひとつ)なども参考に、多くの世代に親しまれる集いの場を目指しました。
かっちりと用途の定まった公共の施設ではなく、誰かの自宅ほどプライベートな場所でもない、少しあやふやだからこそ気楽に過ごせる空間は、「内」でも「外」でもない「縁側」のイメージに重なります。
縁側にふらりと立ち寄っておしゃべりするという光景は、いまや懐かしい時代を描いたドラマやアニメの中だけのものとなりました。
現代を生きる私たちの多くは昭和テイストの踏みこんだ近所づきあいを望んではいませんが、その一方、例えばSNSなどで他者との繋がりを求め続けてもいます。
偶然同じ街に暮らしているということ以外には接点のない間柄でも、気楽に過ごす<場>を共有することで、お互いを尊重しながら、ほどよい距離感の繋がりが持てる――多様な人々が多様なままにゆるやかに繋がっていける場づくりへの想いが、「まちのえんがわ」という言葉に込められています。
「こまち」でできること
さて、誰でも立ち寄れる「こまち」では具体的にどんなことができるのでしょうか。
これについては「こまち」のパンフレットがかなりわかりやすくまとまっています。
まずは下の画像をご覧ください。
ふらりと立ち寄って自由に過ごす「まちのえんがわ」であることはもちろん、スペースの貸し出しや子どもの預かりなどでの利用も可能です。
赤ちゃん・幼児の遊び場として
「こまち」1階にはリビング・ダイニングと6畳の和室があり、和室にはベビーベッドやおもちゃ・絵本などが用意されています。
筆者も取材とは別日に娘2人と一緒に訪れて、のんびり過ごさせていただきました。
おもちゃ(お下がりを寄付されたものだそうです)もかなり充実していて、4歳の次女は目を輝かせて飛びつきました。
スタッフには保育士資格を持った方も4名いて、安心できる遊び場となりそうです。
小中学生が放課後過ごす場所として
2階にはミニ図書室が。
元住人の方のご家族が集めていたという少女漫画のコレクションが壮観ですが、人気の児童書シリーズなども寄付で集まってきているそうです。
保護者を伴わずに訪れる子どもたちに対しても、細かなルールは特に定めていないので、自由気ままに過ごしてほしいとのことでした。
今後何かルールが必要になったときは一緒に相談して決めていきたいとのこと。
携帯ゲーム機を持って待ち合わせる子どもたちもいるそうです。
筆者の長女(小学3年生)は親子での初訪問以降はひとりで、ここのところ週に1,2回のペースで「こまち」に通っています。
下校後そのまま「こまち」に向かい(朝の時点で帰宅時間などの約束はしています)、図書室の隣の部屋にある机やダイニングテーブルで宿題を終え、漫画を読んだり遊んだりして夕方まで過ごしているようです。
これまで児童館やKOKOAで放課後を過ごしてきた彼女にお気に入りの居場所がひとつ増えたことは、筆者としても嬉しい限りです。
また、放課後や休日の利用だけでなく「学校に行きたくない日」や「学校に通っていない子ども」の利用も歓迎しているとのこと。
学校外で学ぶ子どもたちの育ちを支える「多様な学びプロジェクト」に「街のとまり木」として登録もされています。
部屋の貸し出し
パンフレットに記載のあるワークスペースの個室利用の他に、1階スペース全体の貸し出しにも応じています。
「こまち」休館日に貸し切りで利用する場合には1時間500円。サークル活動や懇親会などに利用できそうです。
地域住民に向けたイベントなどは、comarchと相談し、共同運営としていけるのであれば無料とのことでした。
ファミリーサポート制度での利用
ぴーれ読者が気になるであろうファミサポ利用についてパンフレットの補足を。
「こまち」スタッフのうち、現在2名が狛江市ファミリーサポート制度のサポート会員資格を持っており、お子さんの預かりや送迎が可能です。
預かり利用に先がけて親子で何度か遊びに来ておけば、お子さんにとって慣れた場所で顔見知りの相手と過ごすことになるメリットがあります。
2階のワークスペースを借りて仕事をして、1階で見ていてもらうという使い方もできるとのこと。
利用の申込はひだまりセンター内のファミサポの事務局を通してでも、「こまち」に直接でも受け付け可能。事前にファミサポ制度の利用会員登録が必要です。
取材時点での利用者はまだいませんでしたが、既に夏休み期間の予約が入っているとのことでした。
「こまち」のこれから
オープン時期がコロナ禍と重なり、これまでは人を集める催しなどは行われていない「こまち」ですが、今後は事態を見極めつつ、イベントを開いていく予定もあるそうです。
子育て世代に対しては、ママ向けの講座やパパの会、子ども向けワークショップなどを構想中とのこと。
飲食物の提供が落ち着いてできる時期になったら、子ども食堂も始めていきたいそうです。
キッチンもあることだし、子どもが料理をしても?と取材中に尋ねてみたところ、「お菓子作りのイベントもいいですよね!」とのご返答。
利用者側からの提案に応じて、これからの活動を一緒につくっていける柔軟さを感じました。
目が離せない「こまち」のこれから。筆者も娘たちと一緒に応援し、共に楽しんでいきたいと思っています。
野川のえんがわ こまち
- 開所日:月・水・金曜日 10:00~18:00 (祝日は16:00まで)
土 または 日曜日(週替わり)10:00~16:00
- 電話:03-5761-4102 (開所日のみ)
- mail:nogawa@comarch.tokyo
- WEBサイト: こまえくぼ1234 /Facebook
- アクセス:狛江市西野川2-31-1 こまえ正吉苑入口バス停より徒歩1分/御台橋バス停より徒歩10分
※感染症対策に注意しながら開けています。来訪時のマスクの着用や手洗いにご協力お願いします。
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こまえスマイルぴーれでは今後も狛江市内の「居場所」に関する情報をシリーズでお届けする予定です。
また、今年策定された「第2期こまえこども・若者応援プラン」のガイドブック(ぴーれもご紹介いただいています!)には、今回取材した「こまち」を含め、狛江市内の子どもの「居場所」も多数掲載されています。併せてご覧ください。
by むーちょ