昨今、「女性活躍」という言葉を聞くことが増えました。
ぴーれをご覧いただいている方々の中にも、そうした言葉を聞きながら、それぞれに思うことがあるかもしれません。
子育てをしながら周りを見渡すと、子どもとかかわる仕事をされている女性がたくさんいらっしゃることに気づきます。
そうした女性たちは、なぜここで仕事をしようと思ったのだろうか?なぜ子どもにかかわる仕事をしようと思ったのだろうか?と興味を抱き、ぜひお話を聞いてみたいと思いました。
前編の今回は、岩戸にある幼児教室「たいこらんど」を主宰している吉田千香さんにインタビューをしました。
↑photo-1:たいこらんど主宰 吉田千香さん
Q1:今、どのようなお仕事をされていますか?
岩戸北3丁目で0歳(8ヶ月)から未就学児を対象とした幼児教室「たいこらんど」を主宰しています。
生演奏と本物の楽器にこだわった教室で、音楽を通して「人を思いやれる子」「自分の考えを持っている子」を育てたいと、10年以上試行錯誤して作り上げた独自のカリキュラムでレッスンをしています。また最近は、そのカリキュラムをできるだけ多くの子に体験してほしいという思いから、指導者向けの講習会を開催し、全国各地の先生に生演奏で指導する良さ、子どもたちへの効果を伝えているところです。
↑photo-2:教室内にあるたくさんの楽器。全部本物です。
Q2:今のお仕事をするようになった経緯を教えてください。
音大卒業後、フリーの演奏家として打楽器の演奏活動や小・中高生の吹奏楽の指導をしていましたが、その時にあまりにもリズム感の悪い子が多いことに気づいたんです。
手拍子が打てない、行進ができない、ジャンケンのタイミングすら取れない。そこで、当時勉強を始めていた「リトミック」の要素を取り入れた指導をしてみたところ、上達していく様子が目に見えてわかりました。
―― 今と同様に、演奏家としてのお仕事と並行して指導もされていたのですね。大人向けの教室などもあると思いますが、子どもたちに指導しようと思ったのはなぜですか?
早期教育の重要性を感じたことと、子どもたちの発想力がおもしろく、1人1人の可能性を伸ばしてあげられたらなと思ったからです。
私も子どもたちから元気をもらえますし!
―― 今のお仕事は、その時の経験がもとになっていらっしゃるのですね。
はい。これは幼少期の「遊び」が足りてないのでは?と感じ、小さい子、それも赤ちゃんから通える音楽教室を作りたいなと考えていました。
そんな矢先、幼馴染に子どもが産まれ久しぶりにランチでもと会った時に、ちょうどリトミックの話になり、「やらせたいんだけど、この辺に教室ないんだよねー」「え?じゃあやろうか!」とこんなノリで始めたのがきっかけでした。新しくできたコミュニティセンターの音楽室で、調律もしっかりしてあるグランドピアノが置いてある良い環境でした。
狛江駅前の「泉の森会館」でもやるようになり、2012年に現在のスタジオを店舗として借りて本格的に始動しました。
↑photo-3:たいこらんどのキャラクター たいこらんどちゃん
―― 最初は千葉県で始められたようですが、現在の狛江市にスタジオを作ったのはなぜですか?
初めは実家のある千葉市でのスタートでした。
都内に引っ越す関係でどこか別の場所でもやりたいなと探していたところ、グランドピアノもあって広い空間がある「泉の森会館」が見つかったわけです。
チラシを配って体験レッスンをやったところ「先生、前のお教室辞めてきたので、これからは『たいこらんど』に通いますから!」と言ってくれたお母さんがいらっしゃったんです。で、やるしかないな、と。(笑)
その後、貸しスタジオでは持っていかれる楽器も限られますし、もっとクラスを増やしたいと思ったので、今の岩戸北のスタジオをオープンするに至りました。
↑いちょう通り沿いにあるスタジオ
それから、教室開設前に小・中高生を指導していた時、「PCや携帯で音楽を聴く習慣ができてしまって生演奏というものに関わる時間が少ないのでは?」「音の振動を知らない子もいるのでは?」と数々の問題点が浮かび上がっていました。
それに加え「言われたことはしっかりやるのに、自分で考えられない子が多い」、「自分の考えを発言することに恐怖心を持っている子が多いな」、というのも同時に感じたことです。
音楽の基礎知識を身につけるのはもちろんのこと、自己肯定感を持ったり、自由な発想をどんどん発信できる空間、知識詰め込み型ではなく、自分たちで考えながら楽しむ場所を作りたいなと思っています。
Q3:今のお仕事をする前と現在とで、自分自身や周囲にどのような変化がありましたか?
【自分自身について】
子どもの視線で見たらどのように見えるかな、どんなことを感じるかな、と考えることが多くなりました。子どもの「なんで?なんで?」には気付かされることが多く、私自身昔から好奇心旺盛なタイプですが、さらに拍車がかかったような気がします。
それから、常に見られている立場なので、意識して丁寧に物を扱うようになりました。すぐ子どもに真似されてしまうので。言葉遣いも同様です。
この仕事をする前から、丁寧に音を出すことは私が1番大切にしていることなのですが、子どもたちを目の前に演奏すると、優しい音色が出せるようになった気がします。
【周囲について】
子育てに関する相談を受けるようになりました。月齢に応じた声がけや、遊び方など、その子の性格や成長に見合ったアドバイスをするようにしています。
街で子どもが寄ってきたりじっと見られたりすることが増えたように感じます。
Q4:悩んだ時や、ストレスがたまった時はどうしていますか?
仕事の内容で悩んだ時は、同じように教室をやっている先生に相談したり、保育関係の人に話をきいたりします。全く違うジャンルの人のアドバイスをもらうこともあります。 他人に話すことで、見えなかったものがクリアになってきますし、共有することで大した悩みでないように感じるのが良いですね。
ストレスが溜まった時は、趣味のマラソンで景色の良いところを走ったり、山に登って気持ちをリセットします。いずれにせよ、そのあとに飲むお酒が好きだったりするんですけど(笑)
↑photo-4:体を動かして、気持ちもリフレッシュ
Q5:これからの目標や目指すところを教えてください。
なるべく多くの人に、たいこらんどの内容を体験してほしいなと思います。
子どもたちが楽しいのはもちろん、お母さんの子育てのヒントを与えられる場だったり、癒しの空間になるように、これからも上質な楽器、生演奏にこだわって進化し続けていきます。
そして、たいこらんどを卒業した子たちがそれぞれ自分を活かせる場所で活躍し、その報告会も兼ねて同窓会のような感じで集まることが1つの夢です。
そのためにも、1つ1つのレッスンを大切に、その瞬間を楽しみながら「やっぱりたいこらんどが好きだなぁ」と自分自身が思い続けられるように日々精進していきます。
↑photo-5:目指すところは、まだまだたくさんあります!
取材を終えて・・・
いつも笑顔で子どもたちと接する吉田さん。
自分が目指す目標に向かって、試行錯誤を繰り返しつつも、真っすぐ向かっていく姿勢が印象的でした。
後編は、また違った形で子どもに関わる仕事を始めた女性について、掲載予定です。
by:うさこ
写真提供:photo-1,2,3,4,5 たいこらんど
イラスト:こどもや赤ちゃんのイラスト わんぱぐ